第58回/千葉マリア

「麻薬に溺れていた長男もやっと立ち直ってくれて」

波乱万丈人生の始まりは、通りかかったビルにあった芸能事務所の募集看板だった。「田舎ものだったから、友達と覗いてみよう」と。16歳。勉強が嫌いで、高校を中退した直後だった。母子家庭で6人兄妹の末っ子だったから、早く仕事して母を助けてあげたかったのだという。
「社員の募集だったんですが、趣味、特技を聞かれ“歌”と答えたら、事務所の人に“歌ってみて”といわれて。歌ったらスカウトされた」
デビュー39年目を迎えた千葉マリアだ。

「私、歌を即興で作れるんです。レッスンに通う中で作った曲が『ゆうべの秘密』でした。小川知子さんで大ヒットしましたが、元々あった詩に曲をつけたのは私でした。一銭ももらえなかった……」
大人の狡さに嫌気が差して、彼女は結婚を選ぶ。相手は六本木のスナック経営者の弟で、夕刊紙の記者だった。すぐに長男が生まれたが、旦那はギャンブルに明け暮れる毎日。生活費も貰えなかった。そんな彼女に、曲を奪ったマネジャーから再び誘いの声が。

「風呂付のアパートに越したかったから、歌を歌うことにしました。デビュー曲も私が作ったのに、そのマネージャーの作曲になっていました」
まあいいや、という思いの歌手活動も軌道に乗った。
「ある日、家に泥棒が入ったんです。でも、主人は、私たちを少しも心配してくれなかった。ダメだと思いましたね。たった2年で離婚です」
乳飲み子を抱えて仕事場にも通った。その後、
「松方弘樹さんの前歌で全国を回る仕事が多くなった。それで親しくなって、子供も生まれたんです」
で、彼女は芸能界から身を引くことになった。

「長男が17歳になったとき、3歳の弟を連れて、彼に会いに行くんです。“生活が出来ないから養育費を出せ”って。彼もビックリしてましたが、それから養育費を入れてくれるようになりました」
その次男は今年24歳。
「次男を可愛がってくれた長男が大麻、覚せい剤、麻薬に手を出すようになって。“アダルトチルドレン”というんだそうです。自己愛のない子供に育ってしまって。私の責任です。10年以上苦しく、悲しい思いもしました」
という彼女だが、長男も立ち直り、親子で、麻薬撲滅の戦いをしている。そして10年。平穏が戻った彼女の新曲『まねき猫』の作詞・作曲名は、彼女の名義になっていた。

■プロフィール
本名 十枝みつ。
3月31日千葉・茂原市生まれ。
趣味 ドライブ、読書。
特技 歌と作曲。

12月3日、東京・目黒雅叙園で「麻薬撲滅チャリティーショー」

■問い合わせ先
セントラルレコード 03-3387-3811